福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「今から緊張してきちゃったんですけど……それより、西宮さん、お姉さんいるんですか?」
「あ、うん。二人いるんだよね。しかも、二人ともすごい自我が強くて厄介なタイプ」
だんだんと大きくなっていく不安に、やっぱり挨拶はもっと後でもいいのでは? なんて、早くも意思が揺らぎそうになる。
だけど、どうしてご両親よりもお姉さんの方に認めてもらうのが難しいのだろう。そう疑問に思い始めると、そんな私の考えを察したのか、西宮さんが口を開いた。
「三人兄弟で、俺が末っ子なんだけどさ。小さい頃から、姉貴二人は俺のことをすごく可愛がってたらしくて。俺がクラスメイトに少し嫌がらせをされて泣いて帰った翌日なんて、その嫌がらせをしてきた男の子のクラスまで二人で乗り込んだんだよね。びっくりでしょ?」
口角を上げて、ビールを喉に流し込む。
笑ってお姉さんの話をする彼は、「ちょっと普通じゃないよね」なんて言いながらも何だかんだ幸せそうだ。
家族に、愛されて育ってきた人なんだな。幸せな家庭で育てられてきた人なんだな、と私まで幸せな気持ちになる。
「それじゃあ、ご両親よりも高い、その壁を乗り越えないといけないんですね……」
微笑ましい話だけれど、私の方はより一層の緊張感と不安が増している。
それだけ、お姉さんたちは西宮さんのことを愛しているのなら、きっと、そんな弟の結婚相手なんて安易に認めるわけがない。