福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
もう既に心が折れてしまいそうな私は、恐る恐る口を開いた。
「やっぱり、やめませんか……?」
「あはは、もう弱気になっちゃった?」
私の表情を伺いながら、けらけらと笑う西宮さん。私の冷たい視線に気づかず笑い続ける彼は、他人事だと思っているに違いない。
どうして私だけこんなに高い壁を登らなきゃいけないんだ。と、嘆きたい気持ちを必死に堪えていると。
「俺も、今度麻美のご両親に挨拶させてよ」
一緒に頑張ろ、と言って優しく口角を上げる彼。
そんなに優しい表情をして、こんなにも嬉しくなるような言葉を貰ったら、意外と単純な私は首を縦に振るしかない。
「……分かりました」
どれだけ高い壁だとしても、彼と同じ道を歩いていきたいというこの気持ちに嘘はない。
いつかは必ず登らなければいけない壁なら、早く登り切ってしまった方が楽か。
そう自分に言い聞かせ、私は明日、西宮さんのご家族に会いにいくことを決意した。