福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「本当にみんな揃ってんじゃん」
ぼそり、と呟く彼。その一言を聞いて、私の緊張感は更に増す。
ああ、足が震えてきた。帰りたい。なんて思いながらも、意を決した私は西宮さんの後ろから横へと足を踏み出した。
目の前に広がる景色には、透明ガラスのテーブルと、それを囲むソファに腰をかけるお姉さん二人と、会社の社長でもあるお父さん、それから、お婆ちゃんにお爺ちゃん。
恐らく勢揃いしているのであろうご家族の視線がすべて私に刺さり、私はまたごくりと唾を飲んだ。
「あー、まずは紹介するね。彼女は、柏原麻美さん。結婚を前提にお付き合いしてる」
左隣の彼が、私を見て口角を上げる。
彼の表情に少しだけ緊張感が解けた私は、すうっと鼻から空気を吸い込むと口を開いた。
「かっ……柏原麻美です。西宮さんとお付き合いさせてもらっています。本当に平凡に生きてきたアラサーの残り物ですが、温かく見守ってもらえると嬉しいです」
挨拶を終えた私は、腰から思い切り頭を下げた。
最初声が裏返ってしまったとか、こんな挨拶で大丈夫なのだろうか、とか。そんな心配をしていると、「あははは」と太い笑い声が聞こえてきた。