福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
驚いて顔を上げると、笑っていたのは社長であり彼の父である秀之さん。
「いやあ、君らしいセンスのある挨拶だね。気に入ったよ」
「えっ」
「覚えてるかな? 面接の時に君が言った言葉」
「あ、えっと……はい」
覚えているというよりは、忘れていたのに思い出させられたと言う方が正しいけれど、緊張している私は単調な言葉を発するので精一杯だった。
あの時の台詞を思い出させた張本人である、となりの西宮さんに視線を向ける。すると、私の視線に気づいた彼は私の方を見て優しく笑った。
「会社を取りまとめる者としては、学歴や経験値、それから能力を見て、上から順に入社してもらうのが一般的だ。どれだけ頑張ってくれる人か、なんてその人をじっくり見ないと分からない。だから、数値で表されるものを見るしかない。だけど、あの面接の最後の質問で、あんな返答をしてくれたのは君だけだった」
あの返答だけで僕は君を気に入ったよ、と言った社長の言葉に私は目を丸く見開いた。
確かに西宮さんも、社長が私のした返答を気に入っていたと言ってくれてはいたけれど、まさかここまで言ってくれるとは。
「ありがとう、ございます」
もう既に乾ききっている口で、お礼を言う。すると、背後から現れたお母さんが私達を見て口を開いた。
「そんなところに突っ立ってないで!ほらほら、座って」