福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
どうぞ、と言って二人がけのソファを指すお母さん。私と西宮さんは一度顔を見合わせると、そのソファにゆっくり腰をかけた。
向かい側には社長とお母さん、そして、右側にはお姉さん二人。左側には祖父母さんが腰をかけている。
30年以上生きてきて、結婚までこじつけたことのない私は、恋人のご両親に挨拶をするなんてこれが初めてだ。それに加えて、西宮さんを可愛がっている二人のお姉さん。それから、祖父母さんまでいるなんて、ハードルが高すぎやしないだろうか。
「柏原さんは、何がきっかけで幸人と関わるようになったの?」
恐怖にも似た緊張感を抱え、ぎゅっとスカートの上で拳を握っていると、艶のある黒髪を綺麗に巻いている一人のお姉さんがそう問いかけてきた。
「西宮さんとは、先月初めに参加した婚活パーティーで出会いました。スターホールディングスには3年勤めさせてもらっていたんですが、当時まだ幸人さんをしっかり見た事がなくて、声をかけられ、そこで初めて副社長が彼だということを知りました」
私の返答に、向かいのお母さんが「あら、私が参加しなさいって言ったパーティーのことね!」と言って笑う。
あの婚活パーティーは、西宮さんのお母さんが参加を勧めたのか。なんて思っていると。
「本当に知らなかったの? 私達が言うのも何だけど、幸人は社内でかなり有名なんじゃないかしら」
明るい茶色のショートヘアが大人っぽいもう一人のお姉さんが口を開いた。
目も口も笑っていない、なにかを品定めするような表情に背筋が凍りつくような気がしたけれど、ここまで来て折れるわけにもいかない私は、小さく深呼吸をすると再び口を開いた。