福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
彼を両親に紹介できる日はいつになるだろう。
そんなことを思いながら少しワクワクしていた私だったけれど、その日は意外にもすぐにやって来た。
「あー、緊張する」
住宅地の真ん中にある、ごく普通なクリーム色の一軒家。その玄関の前で何度も大きく深呼吸をしているのは、西宮さんだ。
彼の家に挨拶に行ってから二週間も経っていないけれど、私が母に結婚を前提に付き合っている恋人がいることを伝えると、すぐに連れて来なさいと言って聞かなかった。
そのことを西宮さんに話すと、彼はすぐにスケジュールを合わせて日取りを決めてくれたのだけれど、そんな余裕はどこへやら。今日は朝からずっとこの調子。
「大丈夫ですよ。私の父も母もきっとすぐ認めてくれます」
「本当に?」
「はい。間違いなく西宮さんのお姉さんよりも難易度は低いので安心してください」
私の言葉にふう、と胸をなでおろす彼。
普段、仕事ではたくさんの人に慕われ、プライベートでもたくさんの女性に言い寄られているであろう彼もこんな風に緊張することもあるんだ、なんて思いながら口角を少し上げた。
「開けますね」
「ん、分かった」
私が鍵を開け、ドアノブを握ると、彼はもう一度深く深呼吸をした。