福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「緊張し過ぎですよ。もっとリラックスしてください」
彼にそう声をかけるけれど、彼は「他人事だと思って、難しいこと言うよねぇ」と言うと眉尻を下げて笑った。
「もう、何言ってるんですか!私だってこの間、人生で一番緊張したんですからね? 我が家の父と母の難易度は間違いなく低いので、西宮さんらしく堂々としててください」
翌日に挨拶に来て欲しいと突然言われ、心の準備をゆっくりする間も無くあんな豪邸に足を踏み入れた私。
しかも、彼からお姉さん二人のことを〝二人ともすごい自我が強くて厄介なタイプ〟と紹介されていた私は、あの日、どれだけ緊張して、足も震えていたことか。
「私の乗り越えた壁に比べれば、うちの母も父も簡単ですよ」
私もサポートするので、と付け足して西宮さんをソファーに誘導して座らせる。
「本当に簡単かな」
「はい。100パーセント簡単です」
「はは、言い切るね」
何の根拠もなく私が言い切ると、西宮さんは自然と口角を上げていつものように笑った。
「そこまで言い切ってもらえると流石に安心するよ」
「ふふ、それは良かったです」
西宮さんはどうやら本当に安心したらしく、表情を綻ばせたまま私の方を見ている。
見慣れた我が家のリビングを背景に、西宮さんが私と同じソファー座っていることが何だか不思議で仕方がない。夢みたいだな、なんて呑気に思っていると、誰かが階段を降りてくる足音が耳に入ってきた。