福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「ちょっと、貴方ってば。 幸人くん、気分悪くなるような態度でごめんなさいね。どうぞどうぞ、腰掛けて楽にして」
「あ、ありがとうございます。失礼します」
母の一言で、西宮さんがゆっくりソファーに腰をかける。
まだムスッとして腕を組んでいる父に、私は、ただただ西宮さんのことが心配で横目で彼の様子を伺っていた。
「幸人くんは、麻美と同じ会社の方なのよね? この子、ちゃんと働けてる?」
「はい。直接仕事での関わりはないですが、麻美さんの所属している企画販売部では、麻美さん持ち前の粘り強さや仕事への真剣な打ち込みのおかげで毎年良い商品が世に出ています。中には文具の年間売り上げランキング上位に入っているものもあるくらいです」
すごく頼りになります、と付け足して笑う西宮さんに私の方が恥ずかしくてはにかんでしまった。
今まで、恋人は仕事と言っても過言ではない程仕事に時間を費やしてきた私だ。頑張ってきたと自分でも胸を張れるけれど、改めてこうして褒められると何だか照れ臭い。
「あら、本当? それは良かったわ。伊達に婚期を逃してきたわけじゃなかったのね」
くすくす、と意地悪に母が笑う。すると、それにつられるようにして西宮さんも口角を上げた。