福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「でも、直接仕事の関わりはないのにどうして交際することになったの? って、ちょっと深入りしすぎかしら?」
「お母さんってば、そんな事は別に……」
「はは、僕は全然いいですよ。せっかくなので、お話させてください」
西宮さんに気を使い阻止しようかと思ったけれど、西宮さんはひとつも嫌な顔をせずに笑ってみせた。
うちの母は、ずっと前からそうだ。私の私生活を気にしているのか、はたまたその手の話が好きなだけなのか。よく分からないけれど、昔から恋愛の話を2人でしたりしていた。
お父さんも黙り込んでむすっとしている中、こんな話をしてしまっても大丈夫なのだろうか。
そう心配している私をよそに、お母さんはずるずると西宮さんを巻き込み、恋愛トークに花を咲かせ始めた。
「あら、社内じゃなくて婚活パーティーで出会ったの?」
「はい。偶然同じ婚活パーティーに参加していて、その途中で僕が半ば無理矢理ご飯に連れ出したんですよ。それをキッカケに仲良くなりましたね」
「あら、素敵な話!抜け駆けだなんて、若いっていいわねぇ。この子、30にもなって普通の女の子よりガードが固い上に不器用だから可愛気がなくて困ったんじゃない?」
母の一言に私の胸が一瞬、ぎくり、とした。
まるで私の性格や恋愛偏差値を知り尽くしているかのような一言に、この人も伊達に33年間私を育てて来たわけじゃないな、と感じる。
「本音を言えば、結構苦戦しました。どれだけアピールしても中々振り向いてくれなかったですし。でも、そういうところに惹かれましたね」
「ふふ。そうなのね。そう言ってくれる幸人くんみたいな男性がいて良かったわ。ちなみに、幸人くんはさっきの話だとこの子の上司に当たるみたいだけど、どんな部署に所属しているの?」