福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
残り物には福がある
「麻美が言ってたことと全然違うじゃん……」
夕方頃、西宮さんを送ると言って家を出た私と西宮さん。
自分の車の前に立った西宮さんは、緊張感から放たれたのか、上半身をぐったりとさせるとそう言葉を漏らした。
「すみません……まさか、父があんな態度をとるとは予測できませんでした」
むすっとした表情で、何も話さない。挙げ句の果てには結婚を認めないだなんて言い出してしまった父。
恋人の父親とはいえ、あんな態度をとられて気分が良いわけがない。
「あはは、俺は大丈夫だよ。それに、お父さんだって、たった一人の愛娘でしょ? そりゃあ、こんな赤の他人に簡単には渡せないよ」
「でも……」
「大丈夫、大丈夫。お父さんに認めてもらえるように頑張るから心配しないで。ね?」
ゆっくり私の頭上に置かれた西宮さんの手のひら。よしよし、と優しい顔をした彼に髪を撫でられ、私は少しだけ安心した。
「分かりました。でも、本当に父に認められるまでここに来るんですか?」
私は、彼が父に言った〝僕のことも、麻美さんを幸せにする覚悟があることも、知ってもらえるようこれから何度でもここへ来ます〟という言葉をふと思い出した。
「あー、うん。そうだね。認めてもらえないままで結婚はできないでしょ」
やはり、あの言葉は本気だったらしく、西宮さんは複雑そうに笑った。
「すみません、本当に。私からも何とか言います。もし来てくださる時は言ってくださいね!私もフォローするので!」
私の一言に西宮さんはくすりと笑うと「頼もしい彼女だ。ありがとう」と言って私の髪をくしゃくしゃと強く撫でた。