福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「西宮さん、挨拶に来たの?」
口角を上げてキラキラした瞳を私に向ける彼女は、言うまでもなく喜んでくれているのが分かる。だけど。
「でも、お父さんが〝結婚は認められない〟って言って聞かなくて」
喜んでいる彼女に水を差すようだけれど、私は優佳にそう言った。
しかし彼女は、驚くかと思いきや意外にも「あー」と言って首を縦に振る。
「まあ、一人の愛娘だもんね。うちでもそんなにすぐに首を縦には振ってくれなかったもん」
私もすごい説得した、と言う優佳に、私は少しだけ安心した。しかし、西宮さんが挨拶に来た土曜日以来、私は何度も父を説得しようと試みたけれど、全くと言っていいほど効果はなかった。
父も「向こう側の問題だ。お前が何と言おうと変わらない」と言っていたし、このまま私が説得を続けて変わるとは到底思えない。
「で、お父さんが反対したところまではいいとして。どうして副社長を挨拶に連れて行ったのがダメだったって溜息ついてたのよ」
「それは……ひょっとしたら勘違いかもしれないけど、挨拶に来た土曜日以来、西宮さんの態度がいつもと違う気がして」
ぼそぼそ、と、独り言でも言うかのように小さな声で呟いた。それを聞き取った優佳は、隣から「態度って、例えば?」と私に問いかけて来た。