福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「すみません。紅茶、ごちそうさまでした。美味しかったです」
お邪魔しました、と言って頭を下げる西宮さんに、母がひらひらと手を振る。
「こちらこそ毎日ありがとうね。また来てちょうだい」
「はい。また来ます」
「それじゃあ、行ってきます」
そう言ってリビングの扉を開く。西宮さんが出て、リビングの扉を閉めると、いきなり背後の西宮さんが私の耳元に口を近づけた。
「完全にオフな麻美、初めてみた」
かーわい、と言って笑う彼に、私は今更自分がすっぴんでパジャマ姿であることを思い出した。
「無理!やだ、見ないでください!」
「はは、今更でしょ」
手のひらで顔を必死に覆ったけれど、確かにこんなの今更だ。
「すみません、着替えと軽くメイクだけしてきていいですか……」
西宮さんにこのまますっぴんを見られ続けるのも恥ずかしいし、それに、このままの状態で外に出るわけにもいかない。
「俺は全然そのままの麻美も好きだけど……そういうことじゃないもんね。分かった。待ってる」
快く西宮さんが頷いてくれたのを見て、私は急いで階段を駆け上がり部屋に入った。
西宮さんを待たせないようにと軽く、だけど念入りにメイクをして、洋服は少しだけ悩んだ末、お気に入りの花柄のワンピースを着て部屋を出た。