福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「柏原さーーん!」
背後から私を呼ぶ声が聞こえてきた。その声はロビーに響き渡るのではないかという程大きく、私は恥ずかしさから静かに目を伏せた。
私を呼ぶ声の主は、あの子しかいない。そう分かっていた私は、渋々ゆっくり振り返る。
「永田くん、声が大きい」
振り返った私に向かってものすごい勢いで駆け寄ってくる、子犬のような可愛らしい顔立ちの彼は、営業部の永田瑠衣(ながたるい)くん。
新卒で今年の春に入社してきた22歳で、私と優佳と同じ企画販売部に所属している。ふわふわした天然パーマの茶髪が特徴的で、性格まで子犬のように人懐っこく、上司からもとても可愛がられている。
「はは、ごめんなさい。月曜日の朝一番から柏原さんに会えて嬉しくて、つい」
眉尻を下げて申し訳なさそうに笑っている永田くんは、本当に子犬のようで可愛らしい。そこらへんの女子よりも可愛気があるのではないかと、いつも思ってしまうほどだ。
「ちょっと、永田。一応、ここに私もいるんですけどー?」
今まで黙って隣に立っていた優佳が腕を組んだ状態で一歩前へ出た。
永田くんは、驚いたように「あっ」と声を漏らしたあと「高橋さん、おはようございます」と言って満面の笑みを浮かべる。