福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
考えて、考えて、考え抜いた結果、春の新商品の企画案が3つ絞り出された。
その3つの企画案が全て出来上がったのは定時である18時を3時間も過ぎた21時過ぎ。ここまで考えたのはいいけれど、どうも3つともピンとこない。
「帰ろ」
はあ、と溜息混じりにそう呟いて席を立つと、まだ残っていたらしい斜め向かいのデスクの永田くんが顔を上げてこちらを見た。
「柏原さん、お疲れ様です。すごく集中してましたね」
「あはは。全然浮かばなくて頭フル回転させたんだけど、結局、全部ピンときてなくって、また帰ってから考えるんだけどね」
「ですよね。これだ!ってものが浮かんでも、調べてみたら既に他社が販売してたりしますもんね」
「そうなんだよね。あれ、永田くんは、まだ残るの?」
永田くんのデスクを背伸びをして少し覗いてみる。すると、彼のデスクの上はまだ山盛りの資料が乗っており、指先もキーボードの上に乗せられたままだった。
「はい。家は家族がいてなかなか集中できないので。あと少し頑張ろうかなと思ってます」
「そうなんだ。あまり無理しないでね」
「はい!ありがとうございます!柏原さんも、気をつけて帰ってくださいね」
右手を挙げてひらひらと振った永田くんに「ありがとう」と返すと、私も同じように右手を振ってオフィスを出た。