福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「ああ。まだ柏原さんと話をしたいからここで待っているね」
私は、片手に持っていたワイングラスをテーブルに置くと、会釈をしてその場を立ち去った。
女子トイレに入り、鏡の前に立った私は今回のために新しく買っておいた小さなクラッチバックからリップを取り出し、それをひと塗り。
毛先を緩く巻いた、胸元までの長さのある薄茶の髪。それを今日は、上品にハーフアップにしてみた。
鏡を食い入るように見て、髪を念入りにチェックしだす私は、今日は本気中の本気である。
都内の高級ホテルでの立食婚活パーティー。あと半年もしないうちに33歳を迎えてしまう私は、年齢的にも、精神的にも、これで最後にしようと決めてこの婚活パーティーに望んでいる。
最後だから、と、奮発していつもより質の良さそうな婚活パーティーにエントリーしたし、身だしなみだって、昨日はエステに行ったし、ドレスもこのために新しいものを購入した。ここまでして、結婚相手が見つからなかったとなれば、私はお金も人生も失うことになる。それだけはゴメンだ。
「……仕方がない。行くか」
おひとり様エントリーのみ可の立食自由型婚活パーティー。制限時間は残り僅か二時間。
お目当ての人がいれば自分から声をかける。そうしなければ打ち勝つことは不可能な、まさに戦と言えるこの戦場。
見た目がタイプの人がいないのなら、中身重視。しかし、中身というのは話してみないと分からないもので。50人の男性が参加しているこの会場で、いかにどれだけ多くの男性の中身を知れるかが鍵になる。