福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
コツコツとヒールを鳴らしながら、昼間と比べるとかなり静かになった廊下を歩きつづける。
エレベーターの前に立ち、下矢印の表示されたボタンを押すと、最上階からやって来るエレベーターを待った。
最上階といえば、社長や副社長しか立ち入れない部屋があると聞いたことがあるな、なんて思いながらどんどんと下がって来るエレベーターの階数表示を辿っていく。すると。
ポーン、と少し拍子抜けな音を鳴らして私のいる7階へやって来たエレベーターの扉が開いた。
「あっ」
「あ」
扉が開いた瞬間、ふと、扉の向こう側にいた人物と目があった。
ネイビーのスーツをビシッと着こなし、こちらを見て私と殆ど同時に声を漏らしたのは、あの西宮さんだった。
サラサラとした前髪を全部下ろしていた昨日のラフなイメージの髪型とは一変、今日は前髪が後ろに流されている。
会社では会ったことがなかったから新鮮に思うけれど、会社ではいつもこんな感じなのだろうか、なんて考えながら私はぼうっと突っ立ったままでいた。
ぼうっとしていると、勝手に閉まろうとするエレベーターの扉。それを見てはっとすると、閉まりそうな扉を内側のボタンを押して再度開けてくれた西宮さん。
彼は私に「入らないの?」と問うと目を丸くした。