福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
異性に褒められ慣れていないせいか、嘘だと頭では分かっているつもりなのに、どうしても高鳴って止まらない心臓が憎い。
「あ、ひょっとして今日はこれから婚活とか?」
おどけた顔で私にそう問いかける彼の言葉を耳に入れた瞬間、私は眉間にしわを寄せて彼を見た。
「残業して疲れてるのに、こんな時間から婚活なんてしません!今日は帰ってご飯食べて寝るだけですし、私がそんなに毎日結婚のことばかり考えてると思われてるなら、それは心外です」
少しムキになってそう返す。すると、彼は私の言葉を聞いてくいっと口角をあげた。
何かを企んでいるようなにやりとした笑顔に何となく嫌な予感がする。すると、どうやらその予感は当たっていたようで。
「家に帰ってご飯食べて寝るだけなら、この後暇だってことだよね?」
「えっ?」
「それなら、これから俺とご飯行こうか」
「ど、どうしてそうなるんですか!」
「どうしてって、ご飯食べたいから? この後予定ないなら断る理由ないでしょ? ほら、行くよ」
「え、ちょっと!西宮さん、待ってください!」
既に最初からカマをかけられていた私は、断る理由も見つからず、先に歩き出した西宮さんを追いかけるしかなかった。