福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
西宮さんに連れられ、会社から徒歩五分程度の場所にあるダイニングレストランに入った。暗めのライティングでお洒落な内装。それから、心地の良い静かさ。
リクエストは無いかと彼に聞かれて、つい「お肉が食べたいです」と可愛気のない答えを返してしまった私。
自分でリクエストしておきながら流石にこのお店は高いんじゃ……と財布の心配をしながらメニューを開くと、意外にも価格は驚くほどの高さではなかった。女子会向きなお洒落なメニューからがっつり食べられるメニュー、小洒落た居酒屋メニューまで取り揃えられている。こんな店、この辺りにあるなんて知らなかったな。
「意外と庶民派なんですか?」
「え? どうして?」
「昨日も居酒屋でしたし、今日もすごくお高いお店かと思ったんですけど、女子会にも使えそうなお店で、少し意外だなと」
スターホールディングス社長の息子で御曹司ときたら、もっと高いレストランでの食事しか受け付けないのではないか。なんて、また偏見で勝手なことを考えていたけれど、昨日も今日も、西宮さんは意外にも一般的な店をチョイスした。
「あ、高いお肉の方が良かった?」
「いや!違います!そうじゃないです!寧ろ、このくらいの価格で安心しました。だけど、西宮さんレベルの人はもっと品質の良い高いものしか食べないんじゃないのかなと勝手に思ってたので……」
すみません、勝手な偏見を。
と小さく付け足して頭を下げる。すると、私の頭上に「ははは」と笑い声が降ってきた。