福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「いいよいいよ。そんな偏見くらい、みんな持ってるだろうし。だけど、そんなにストレートに言われたのは初めてかも」
「うう。気分を害してしまったなら、すみません」
もう一度頭を下げると、次は頭上に「いいよいいよ。顔上げて」という優しい声が降ってくる。
「正直で良いと思うよ。そういう嘘のない人って、俺は好きだな」
目を薄めて笑う、優しい表情。それにぐっと胸を掴まれたような気がしたけれど、ぶるぶると顔を横に振り無理矢理目を覚ました。
「確かに、高いレストランとかで食事をする機会は多いんだけどさ。俺、ああいうとこちょっと苦手なんだよね。こうやって話しやすい空間で、話をしたい人と話してるのが一番だから。普段は、居酒屋とか普通に行っちゃう凡人なんだよね」
期待はずれだったらごめんね? と言った彼が今浮かべた笑顔は、ほんの少しだけ、今までのどの笑顔よりも下手くそな気がした。
理由なんてないけれど、なんとなく、瞳の奥が笑ってないような。そんな気がした。
「そもそも期待なんてしてないですけど、でも、今の話を聞いて少し安心しました」
「はは、期待してなかったのか。でも、どうして安心?」
「なんというか、これも勝手な偏見ですけど、私みたいな凡人からすると、お金持ちで裕福な暮らしをしている人って、金銭面も、味覚も、性格も。全ての価値観や構造が違うんだろうなって思ってたんです。だけど、私とは違う環境で育ってきたはずなのに、西宮さんは偉そうには絶対しないし、寧ろ、仕事は抜くことなくしっかりしてるって評判で。金銭感覚も味覚も私達と同じで、仕事は楽にしてるのかと思いきやきっと私なんかよりも頑張ってるんだなと思ったら少し親近感が湧いたというか、何というか」