福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
今、冷静になって考えれば、なんてバカな回答なのだろうと我ながら呆れる。
「……って、どうして西宮さんがそれを知ってるんですか‼︎」
過去の自分の発言を呆れていた私は、はっと我にかえると、つい大きな声を出してしまった。
一瞬、静まり返った店内の視線を独り占めし注目を浴びてしまった私は、顔をうつむけながら西宮さんの返答を待つ。すると。
「社長、新入社員の面接は仕事の都合がつく時は絶対にその場にいるようにしててさ、最後には必ずその質問をするって決めてるらしくて。何百回もその質問をしてきたけど、その中でも麻美ちゃんのが一番面白くて、惹きつけられた答えだったって、面接の後俺に楽しそうに言ってきた」
「恥ずかしい……」
「はは、恥ずかしくなんかないよ。俺も、その話聞いて凄く惹きつけられたし、素敵だと思ったよ」
楽しそうに口角を上げて笑っている西宮さん。
普段キビキビ仕事をしているイメージの社長は普段西宮さんにそんな話もしているなんて少し予想外だった。仕事場では上司と部下にあたるとはいえ、やはり親子なんだな、と少し温かさを感じる。
「その話聞いた時に履歴書の写真だけ確認してさ、社内でふと思い出した時に探したりして。何百人って従業員がいる中で見つけるのは難しいけど、いつかその柏原麻美さんに会えたらいいなって思ってたんだよね。だから、昨日出会えた事、本当に良かったと思ってる」
冗談っぽく笑うわけでもなく、無表情なわけでも、恥ずかしがるわけでもない。
ただ、優しく、柔らかく口角を上げながら呟くように言った西宮さんに、私の胸の鼓動はこれでもかというほどに高鳴ってしまった。