福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

出会い系のアプリと聞くと多少の抵抗はあるものの、婚活パーティーで出会うのもアプリで出会うのも、考えてみればそう大差はない。それに、実際の成功例が身近にあるのなら、拒む必要もないか。

新しい出会いの方法を聞き、近々そのアプリをダウンロードしてみようか、なんて思っていると。

「ここまで話しておいて根本的な部分に戻るけど、麻美って好きな人とか気になる人いないの?」

「えっ?」

突然、真剣な表情でそう問いかけられ、スプーンでミルクティーをかき混ぜる手の動きが止まった。

「今、そういう人はいない……というか、しばらくいない。前の彼氏も、好きだと思って付き合ったわけじゃなかったから」

「そっか、そういえばそうだったね。結婚云々の前に、麻美は、まず好きな人に出会えるといいんだけど」

「好きな人、ね。そんな人、出来るかな」


何も難しいことは考えずに、ただ純粋に好きだと思えた人なんてしばらくいない。今でもふと思い出すくらいに好きだった人が四年前にいた。恐らく、それが最後だ。

この性格上、うまく甘えることもできないし、好きだということをうまく伝えることもできなかった。それが原因で、お互い好きなままで別れることを決めてしまったのだけれど、綺麗なままで終わってしまったせいか、壁にぶち当たった時や、結婚を焦っている最近では特に、ふと思い出してしまうことがある。

都内の大手企業で今も働いていると噂に聞いたけれど、彼は元気にしているだろうか。

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