福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「あ、麻美さん」
背後から私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
もう一度体を半回転させて振り返ると、どうしたことか女性陣に囲まれていたはずの彼が、群れを抜け、私に向かって歩いてきている。
「麻美さん、待たせちゃってごめんね」
私の目の前に立った彼は、そう言って笑うと私の右手をとった。
「え?」
「麻美さんと話の続きをしたいんだよね。悪いけど、こういうことだからさ」
察してもらえたら嬉しいな、と笑顔を浮かべるイケメン。彼の理解不能な行動に、私はただ目をぱちくりさせていた。
「もう既にお目当ての方がおられたんですね」
「残念」
「どうして、その方がいいんですか?」
彼の言葉を聞いて心底落ち込んでいる様子の女性陣。中には私よりも若い子だっているのに、皆真剣に結婚相手を探していたらしく、泣きそうな表情を浮かべている人もいた。
どうしてこんなことになっているんだ、とイケメンの表情を覗くと、偶然にもこちらを見ていた彼の目が合い、彼は私に向かってこれでもかという程優しい表情を浮かべて笑った。
「理由はないけど、麻美さんが良いんだよね。まだ出会って一時間程度だけど、彼女以外ならいらないってくらい素敵なんだ。彼女」