福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「いや、そういう訳じゃなくて……」
「僕もあんな風になれば、付き合ってもらえますか?」
「だから、えっと、そういうことでもなくて」
眉尻を下げ、子犬のようにくるりとした瞳を潤ませている永田くんは、実のところ半年前、私に〝好きです。僕と付き合ってください〟と告白をしてきたことがある。
最初は本気かどうか分からなかったけれど、彼は嘘をついたり、冗談を言って人を面白がる性格でもないことを知っていた私は、その告白を真正面から受け入れたうえでしっかりと断った。
だって、こんなに若くて未来のある純粋な子だ。何が良くて私に告白をしてくれたのかは未だに分からないが、もっと良い子がいるに決まっている。私はそう思っているのだけれど。
「いくら副社長でも負けられないです!」
頑張ります、と私に宣言して目の前のお肉を大きな口で頬張る彼は、ひょっとしてまだ私を追いかけるつもりなのだろうか。
永田くんの言葉に何と返答を返すべきか分からなかった私は、目の前のシャンパンに手を伸ばすと、それを勢いよく喉に流し込んだ。