福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
今週に入ってから、いつも三人でご飯を食べている私達のテーブルに何故か西宮さんがやって来るようになった。
西宮さんは普段、社員食堂ではなく外でランチをしていたらしいのだけれど、一体何が目的でこんなことをし始めたのかは私にも分からない。
「なになに。俺の話でもしてくれてたの? 麻美ちゃん」
わざとらしく私の名前を呼ぶ西宮さん。それから、その呼び名に反応し食事の手が止まる永田くん。彼は、ゆっくり顔を上げると西宮さんを見て眉間をしかめた。
私は、そんな二人の見飽きた言動に大きなため息を吐くと、最後の一口になっていたハンバーグを口の中へ放り込んだ。
「西宮さんの話はしてましたけど、別に良い話じゃないですよ」
「はは。それは残念だけど、麻美ちゃんが俺の話をしてくれたならそれでもいいか。あ、それより麻美ちゃんもハンバーグ定食だったんだ。一緒だね」
「そうですね」
「美味しいハンバーグ食べれる店知ってるから今度一緒に行こうか」
「はい?」
「はい、決まりー」
「えっ? ちょっと待ってください。私行くなんて言ってないんですけど」
「選択権はないからね」
くすくすと笑いながら目の前のハンバーグ定食を食べ進める西宮さん。そんな彼と私の目の前には私達の会話に置いてきぼりにされたような二人がいる。
ああ、彼のせいで、彼とは何もないということを理解してもらえる日がまた一歩遠のいた。