福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「麻美ちゃん?」
「えっ」
────ダンッ!
私を呼ぶ声が聞こえた気がして、立ち上がろうと試みた私の後頭部がデスクに勢いよく当たった。
思ったより勢いがあり、咄嗟に「いだっ」と声を漏らした私は、デスクの下から顔を出して後頭部を手で押さえるとゆっくり立ち上がった。
「一人でそんなとこ潜り込んで、何してたの?」
地震でも起きた? と、オフィスの入り口で立っていたのはまさかの西宮さんで、彼は私に何をしていたのかを聞きながら肩を揺らしている。
「……ちょっと、確認してただけです」
「確認?」
きょとん、と目を丸くした彼に本当の事を言えば、きっと馬鹿にされるに違いない。
「女性の霊がいるかの確認、です」
馬鹿にされると分かっていながらも、他に良い理由も見つからなかった私は、彼に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でぼそぼそっと呟いた。
どうやら私の声は彼まで届いてしまったらしく、彼は、案の定一度目を丸くした後でけらけらと大きな声で笑い出した。
「いやー。麻美ちゃん、最高だわ」
流石に笑いすぎだろう、と思ったけれど、「今日イチ笑った」なんて言って本当に楽しそうに笑う彼を見ていながら悪い気もしない私も私だ。
確かに優佳の言った通り、私は彼から受ける好意を嫌がっているようなフリをしているけれど、実は満更でもないのかもしれない。