福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「そんな最高な麻美ちゃんに良い提案しても良い?」
「良い提案、ですか?」
「そう。良い提案」
彼の言う〝良い提案〟とは何だろうかと考える。彼のことだから、良い提案と言いながらちゃっかりご飯の誘いでもしてきそうだな。なんて思っていると。
「これからさ、ご飯行かない?」
首を少し傾げ、口角を上げた彼。どうやら、私の予想は見事に的中してしまったらしい。
「そんなことだろうと思いました。生憎ですけど、私、残業中なのでご飯ならお一人でどうぞ」
椅子に腰を下ろし、パソコンと向かい合う。
自分の中で納得のいく企画案を出せていない私はここで気を抜いてしまうわけにはいかない。
もう一度集中力を高めようと、デスクの上にあるスターホールディングスの商品カタログの角に指先を置いてページを数枚捲った。そんな私の背後から感じる気配に、私はゆっくり振り返る。
「あー、春の企画案ね」
振り返ると、思いのほか近くにあった西宮さんの顔に驚き、私は咄嗟にパソコンと向かい直した。
そんな私の行動を見ていたのか見ていなかったのかは分からないけれど、背後にいる西宮さんが漏らす笑い声が微かに聞こえてくる。
「何笑ってるんですか」
「麻美ちゃんが可愛くて」
「は、はあっ⁉︎」
パソコンと向き合ったまま、後ろの彼に不機嫌に問いかけると返ってきた返答。その答えに驚いてつい振り返ってしまった私は、また西宮さんとの距離の近さに驚くと椅子をくるりと回転させてパソコンと向き合った。