福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「はは、いつも良いリアクションしてくれるよね。麻美ちゃん」

「何がですか!からかわないでください!あと、ちょっと離れてもらえませんか」

私の背後に立ちながらデスクに右手をつき、パソコンのモニター画面を見ている西宮さんの顔は殆ど私の顔の真横にある。

離れてもらわなければ私はあと何回彼との距離に驚かなければならないのか。

恋をしている異性ではないとはいえ、流石に、整った顔が真ん前にあれば心臓は大きく跳ねるし、しかも、それを短時間に何度も、となると心臓に悪い。


「はは、ごめんね。可愛くてつい」

「なっ……!もう、邪魔するなら帰ってください!」


体をパソコンと向かい合わせたままで西宮さんにそう言う私の顔は、きっと真っ赤に違いない。

〝可愛い〟なんて、西宮さんの冗談に決まってる。そう分かっているのに、どうしても顔が熱くなってしまう。


「春の文房具の企画案……か。うん。よし。今から俺が企画も浮かびそうな良いところ連れてってあげる」


手のひらと甲を順に頬に当て、何とか熱を冷まそうと試みていた私の右手がぐっと引かれた。

「ちょっと、だから……!」

西宮さんの手によって椅子から立ち上がった私は「ほら、急いで準備して」と急かしてくる西宮さんに言われるがまま帰り支度をすませると彼と二人並んでオフィスを出た。


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