福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「西宮さん、どこ行くんですか」
「それは、着いてからのお楽しみ」
「どこか分からないと困ります!良い企画案が浮かぶごはん屋さんなんて、本当にあるんですか?」
とっくに陽の落ちた寒空の下、道沿いに並ぶ店や街灯が煌びやかに光る街並みを西宮さんと肩を並べて歩く。
彼は「早く早く」と言いながらも、会社を出てからここまで、ずっと私の歩幅に合わせて歩いてくれている。
そんな彼が目指している場所はどこなのか。それが考えても考えても分からず何度か問いかけてみたけれど、彼は「着いてからのお楽しみ」の一点張り。
「なになに? ひょっとして、大人なお店に連れていかれちゃうんじゃないかって心配してる?」
「なっ、違います!」
「はは、冗談だって。まあ、でも、安心してよ本当に。そのお店、少しくらいなら企画案のヒントになるはずだから。あ、ここの角を曲がって……」
私の右側を歩いている西宮さんが、私を左に曲がるように誘導する。角を曲がると、左手にある建物の前で西宮さんがぴたりと立ち止まった。
「はい、到着」
足を止めた西宮さんの視線の先を辿る。そこにあるのは、〝文具カフェ〟と書かれた黒を基調としたオシャレな建物。