福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

 え、何。この人、何言ってるの。

 驚きすぎて声も出ない私の目の前で、何故か爽やかに笑い私の手を握り続けている彼。

 女性陣の方に目を向けると、彼女たちは本当に悲しそうな顔をして会場に戻っていった。


「……あの、」


 一人残らず女性が去ったあと、私はやっと口を開いた。ゆっくり握られていた手を離すと、彼はまた笑って口を開く。

「柏原さん、ごめんね? 突然巻き込んじゃって」

 さらっとした栗色の髪。彼が私の顔を覗き込もうとすると、ちょうど瞼あたりまである前髪がふわりと揺れた。


「あの、どうして名前を知ってるんですか」

 さっきから気になっていた。最初に名前を呼んで呼び止められた時も下の名前だったし、今、苗字も呼ばれた。

 今回の婚活パーティーは名札などの個人情報が分かるものは配られておらず、話をして自己紹介をしなければ名前は分からないはずなのに。

「あれ、俺のこと知らない?」

「え? えっと……」

 目を丸くして驚いた様子の彼に、私は彼と何処かで会ったことがないか、記憶の中を探り始める。

 考えて見たけれど、どうしても見つからない。私は、彼と会うのは今日が初めてなはず。

< 5 / 145 >

この作品をシェア

pagetop