福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
え、何。この人、何言ってるの。
驚きすぎて声も出ない私の目の前で、何故か爽やかに笑い私の手を握り続けている彼。
女性陣の方に目を向けると、彼女たちは本当に悲しそうな顔をして会場に戻っていった。
「……あの、」
一人残らず女性が去ったあと、私はやっと口を開いた。ゆっくり握られていた手を離すと、彼はまた笑って口を開く。
「柏原さん、ごめんね? 突然巻き込んじゃって」
さらっとした栗色の髪。彼が私の顔を覗き込もうとすると、ちょうど瞼あたりまである前髪がふわりと揺れた。
「あの、どうして名前を知ってるんですか」
さっきから気になっていた。最初に名前を呼んで呼び止められた時も下の名前だったし、今、苗字も呼ばれた。
今回の婚活パーティーは名札などの個人情報が分かるものは配られておらず、話をして自己紹介をしなければ名前は分からないはずなのに。
「あれ、俺のこと知らない?」
「え? えっと……」
目を丸くして驚いた様子の彼に、私は彼と何処かで会ったことがないか、記憶の中を探り始める。
考えて見たけれど、どうしても見つからない。私は、彼と会うのは今日が初めてなはず。