福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「はい。どうぞ」

「ありがとうございます」

お店の扉を引いた西宮さんに先に店内へと通される。扉の向こう側に足を運ぶと、薄茶のフローリングの上に黒いテーブルと椅子が並んでいる。壁際には文具カフェというだけあって可愛らしい文房具がたくさんインテリアや販売物として置かれている。

「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」

「はい、2人でお願いします」

「かしこまりました。こちらの席へどうぞ」

一番奥の4人席へと案内された私と西宮さんがイスに腰掛ける。

西宮さんが私の目の前に開き置いたメニューを見てみると、パスタやピザ、アヒージョなどのディナーメニューは充実しているし、カクテルやワインなどのお酒の種類も豊富で、私のお腹は気を抜けば音を鳴らしてしまいそうだ。


「ここ、パフェも凄く美味しいらしいよ。見た目も可愛いんだってさ」

女の子はそういうの好きでしょ? と、言って微笑む西宮さん。

〝女の子〟というワードにほんの少しだけドキッとしてしまった私は必死で平常心を取り戻すと、メニューに視線を落とした。

西宮さんが指差した、季節限定の〝文具パフェ〟。今の季節はサツマイモと黒蜜が使われているパフェらしい。

こうみえて甘いものが大好きな私の視線は、そのパフェに釘付け。益々お腹が鳴ってしまいそうで、ごくりと唾を飲み込むと。


「これ、食べるでしょ?」

文具パフェしか見ていない私の視線に気づいたのか、笑いながら西宮さんが問いかけた。

< 50 / 145 >

この作品をシェア

pagetop