福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
彼は、何の恥ずかし気もなくそういう事を言う。
きっと、彼は何も意識をしていないからそう簡単に言えるのだということも、そういう言葉を貰い慣れていない私が意識をしすぎているということも分かっている。
だけど、意識をして発しているわけではない言葉だと分かっていても、こんな風に言ってもらえて嬉しくないわけがない。
「……って!私、今回はちゃんと払いますから!いつもご馳走していただくのは流石にちょっと……」
危うく聞き逃してしまうところだった〝ご馳走のしがいがある〟という言葉に触れる。すると、彼は目を丸くして驚いた後大きく口を開けて笑い出した。
「いいよいいよ、ご馳走させて。こっちが無理に誘ってるんだしさ。本当、麻美ちゃんは律儀だよね」
「いや、律儀とかではなくて、これは当たり前というか……」
「そう?」
「そうです!そもそも、付き合ってるわけでもないのにそんなにご馳走してもらえないです」
私の一言に、目の前の彼が「なるほどね」と呟いた。その後しばらく顎に手を当てて何かを考えているような様子の西宮さんを見ていると、突然視線をこちらへ戻してきた彼と目が合った。
「それじゃあ、付き合っちゃう?」