福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「麻美ちゃん、分かりやすすぎ。目がキラキラしてる」
「なっ、そんなこと……!」
「分かってるって。楽しみにしてたんでしょ? 思う存分食べていいよ」
西宮さんが、すっ、とテーブル中央に置かれていたパフェを私の方へ差し出した。
「え、このパフェは西宮さんも気になるから頼んだんじゃ……」
確か〝このパフェ俺も気になるからさ、食事の後に頼もっか〟と言って西宮さんはパフェを注文したはずなのに。
さっきの台詞は何だったんだ、と考えていると、目の前の彼は「あれは嘘」と言って私にスプーンを差し出した。
「ああでも言わないと麻美ちゃん、食べたいのに我慢しそうだったから。はい、スプーン」
「あ、ありがとうございます。……でも、せっかくなので半分ずつ食べませんか」
スプーンを受け取って、そう提案するけれど、彼は笑ったまま首を横に振った。
「ありがとう。でも、俺はいいよ。実は、甘いもの苦手でさ」
「そうだったんですね……」
「うん。そう。だから、麻美ちゃんが美味しく食べてあげて」
西宮さんに気を遣わせてしまった挙句、こうして私だけ美味しい思いをするなんて、と、少し罪悪感のようなものを抱きながらも、パフェを食べたいという欲望には打ち勝てなかった私は、西宮さんにぺこりと頭を下げた後「いただきます」と両手を合わせた。