福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「ほら、わざわざ西宮さんのいる通路避けたじゃない。麻美、もう絶対に西宮さんのこと好きでしょ?」

言っちゃいなよ、と優佳が茶化すように肘を私の腕に当ててくる。

言わずとも、普段、色恋話のない私に特別な男性が出来たことを面白がっているであろう彼女に、私は睨みを効かせると歩くスピードを速めた。


「好きじゃないし、好きになったって仕方ないでしょ。上手く行くはずがないんだから」

そう吐き捨てたものの、優佳の言う通り、あの二人の様子に〝つまらない〟と思っている自分は確かにいた。

私の事を気にかけているように見せかけて、他の女の子にもあんな風に笑顔で〝凄く似合ってるよ〟なんて言うんだ。なんて、西宮さんは私の彼氏でもなんでもないのに胸がモヤモヤしている。

あの婚活パーティーの日だってそうだったけれど、西宮さんはやっぱりモテる。スターホールディングスの副社長だということもそうだけれど、ルックスやスタイルが良くて、何より、あの気さくな人柄とさりげない優しさを人に与えられる人。

そんな西宮さんだから、あんな風に、可愛らしい女の子なんて嫌でもたくさん寄ってくるはず。そんなの、もうパートナーは選びたい放題じゃないか。


でも、それなのに、どうして西宮さんは私のことをあんな風に気にかけてくれるんだろう。

単に反応を面白がっているだけとしか考えられないけれど、そうだとしたら、どうして時々、胸の奥が苦しくなるほど優しい顔をするのだろう。

どうして、時々、あんな風に私の心を大きく揺らすようなことを言うのだろう───。



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