福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「あー、そっか。知らない人に突然巻き込まれて困ったよね。申し遅れましたが、こういうものです」
スーツの内ポケットから名刺を取り出した彼は、それを私に差し出した。受け取ってそれを見ると、私は「えっ⁉︎」と大きな声を上げてしまった。
「お、本当に知らなかったんだ」
珍しいものでも見るように私を見て、呑気に笑っている彼。
彼の差し出した名刺には、〝スターホールディングス 取締役副社長 西宮幸人〟と書かれている。
私が驚いたのは、彼がスターホールディングスに勤めている副社長だったということ。危うく名刺を落としてしまいそうになるくらいに驚いたのは、私も同じくスターホールディングスに勤めているからだ。
「す、すみません……」
私ったら、なんて失礼なことを。と反省し頭を小さくさげた。
確かに、この会社の副社長は社長である西宮秀之さんの息子、いわゆる御曹司で、おまけにイケメンだという噂話は耳にしていたけれど、運が悪かったのか何なのか、勤め始めて三年以上経つけれど、私はまだ一度もしっかりと副社長の顔を見たことがなかったのだ。
そもそも、イケメンすぎるイケメンは好きではない私からしたら興味も湧かなかったし、知らなくても特に問題はなかった。
だけど、まさかこんな所で会ってしまうとは夢にも思わなかった。