福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「ありがとう、永田くん。なんだか頼もしくなったね」
随分と頼もしくなった後輩に、なんだか親のような感情が湧き上がる。
ついこの間まで相談をしてばかりいた彼が、私のことを心配して、おまけに相談に乗ると言い出した。
なんだか嬉しいな、と思いながらカウンターの向こう側にいる店主にビールを追加注文する私の横で、永田くんがぐびぐびっとビールを勢い良く流し込んだ。
「仕事のことは、まだまだひよっこですけど。でも、柏原さんのことは他の人よりもちゃんと見てるつもりですから」
小さく、でもはっきりとそう言い放った永田くんが、空になったビールジョッキをカウンターの上に置いた。
不覚にもドキッとさせられそうな一言に何と返すべきか分からず、私は黙って枝豆を口の中に放り込む。すると。
「副社長の事で、悩んでるんですよね」
彼の口から、驚く一言が飛び出した。
想像していなかった言葉に私は言葉を詰まらせて、また何も話せなくなった。
違う、と首を横に振ってしまえば嘘になる。確かに、私は西宮さんが女の子と二人で仲よさそうに話していた姿を見てから、ずっと胸の奥がモヤモヤしていた。
仕事で行き詰まってはいないし、他に悩み事もない。それでも、何度も溜息をついてしまうほどの悩みがあるとすれば、私の中で何やら微妙な位置にいる西宮さんのことくらいだ。