福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

「応援って……だから、私は、副社長のことは好きじゃないって言ってるでしょ」

私の一言に永田くんの眉間にシワが寄った。

その、困ったような、呆れたような表情に〝往生際が悪い〟と言われているような感じがして、私はまた言い訳がましく口を開く。

「だって、私と副社長じゃ釣り合わない。それに、私、ちゃんと幸せな結婚がしたいの」

年齢的にももう寄り道してる暇もないし、と小さく呟いた私は、またビールを喉の奥に流し込む。

言い訳を並べた私の言葉に、流石の永田くんも隣で小さく溜息を吐いた。

「柏原さんは、どんな相手となら幸せな結婚ができると思ってるんですか?」

「それは……優しくて、仕事をしっかりしてて、ある程度経済力があって、私を好いてくれる人……かな」

〝幸せな結婚がしたい〟

と、何度となく自分の口で発してきた。

その夢にも似た目標を達成するために、私は、今並べた条件を同じように並べていくつもの婚活パーティーに参加してきた。

特別大きなものなんてなくても、優しさと、常識力と、経済力と、私のことを好きでいてくれる人がいるなら、幸せな結婚はできる。そう信じて結婚活動をしてきた。だけど。

「その条件で本当に幸せな結婚ができるなら、僕でも良いって事ですよね? 柏原さんにはとびっきり優しくできる自信があるし、実際そうしてるつもりですし、自分なりに頑張って仕事もしています。経済力も、柏原さんを養える程度はありますし、誰より柏原さんを好きな自信もあります。その条件を満たしてる人でいいなら、僕でも良いってことになりませんか?」

永田くんの一言に、私は首を縦には振れなかった。

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