福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
寒空の下、街中で
このままでは西宮さんの言動に心臓がもたなくなると思い、私はその後、必死で話題を切り替え、仕事の話や他愛もない話を西宮さんに振った。
どんな話にも笑って答えてくれる西宮さんを見ていると、私は、遅かれ早かれこの人のことを好きになっていたんだろうな、なんて感じてしまった。
こんなにも可愛げのない性格の私に歩み寄ってくれて、私を自然体でいさせてくれる人。こんな人、きっと、この先いないかもしれない。
「ありがとうございました!お気をつけて!」
元気な店員さんの挨拶を背に、お店を出た私達は二人で肩を並べて歩く。
足元に視線を移すと、私よりも長い脚の彼が私と同じ歩幅で歩いている。恐らく私に合わせてくれているその歩幅を見て、私は、寂しさの感じる右手を彼の左手まで伸ばしたくて、でも、できなくて。
彼に言いたい言葉も、もう溢れ出そうに喉元まできているのに、言えないでいる。
「……あのさ、麻美ちゃん。さっきの話に戻るんだけど」
「はい」
隣を歩く彼の左手が、私の右手を握った。
さっきと同じように、指先は交互に絡められ、ぎゅっと彼の方から力強く握られている。
「からかってる、とか、冗談だとか。本当にそう思われるのは嫌だからさ、ちゃんと言っておきたいんだけど」
すうっ、と彼が息を吸い込んだ。