福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「え?」
歩幅一歩分、私より先にいる西宮さんが振り返る。
「私も、好きです。西宮さんのことを好きになってしまったので……逃げない、です。覚悟も、もう、できてます」
ぎゅっと、指先に力を入れた。すると、同じように返ってくる西宮さんの指先からの伝わる力。
その優しくて温かな力に、私は、張り詰めていた緊張感が解けたような気がした。
「わっ、」
西宮さんが私の手を引いて、そのまま胸の中に抱き寄せた。
私の背中に手を回し、ぎゅっときつく抱きしめると、彼は「つかまえた」と呟く。
「あー、どうしよ。嬉しすぎて、何て言ったらいいか分からない」
思ったよりも背の高かった西宮さんの鎖骨あたりに埋めていた顔を上げると、彼は本当に嬉しそうに笑っていて、私までつられるように口角を上げた。
私だって、何と答えたらいいのか分からないくらい幸せで、嬉しくて仕方がない。
だから、私はもう一度顔を彼の胸に埋めると、ゆっくり、両手を背中に回した。