福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
私が西宮さんと付き合っているという内容を始めとしたいくつかの噂はそれなりに広まっているらしく、廊下に出ると私を見て話す女性の姿をいくつも見かけた。
オフィス内でも何となく視線が気になってしまって、仕事に集中出来ない時間が続き、やっとの思いで定時を迎えた私は、逃げるようにしてオフィスから出たのだけれど。
「ほらほら、あの人」
やっぱりまだ囁かれている、私と西宮さんの噂。
真っ直ぐ続く廊下を歩いている私の視線の先。廊下の隅で、私をまじまじと見ながら立ち話をしている女の子二人。ぱっと見20代前半のその子達は、少しずつ近づいていく私をまだ見続けている。
「えー、あんなおばさんと付き合ってるの? 嘘でしょ?」
「本当、本当。副社長も認めてるらしいし。どんな手使ったんだろうね」
距離は僅か数メートル。だというのに、小さなボリュームで話すわけでも口元を隠しているわけでもない彼女達は、噂話というよりは、私に聞こえるように言っているのかもしれない。
私は、彼女達と目を合わせないようにしながら隣を通りすぎると足早に会社の出口へと向かった。
エレベーターではなく、人気の少ない階段を駆け下り、わざわざ遠回りをして会社の出口を目指す。すると。