福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
ブー、ブー、と突然震えだした私の携帯。私は、カバンの中でバイブ音を鳴らしている携帯を取り出すと、通話ボタンを押した。
「もしもし」
携帯の画面を耳に当てる。すると、画面の向こう側から「お疲れ」と優しい声が聞こえてきた。
「えっと……西宮さん、ですか?」
恐らく、声の主は西宮さんのはず。しかし、つい着信先を見ずに電話を出てしまったせいで、今通話をしているのが西宮さんなのか確信が持てなかった。
私が確認をすると、電話の向こう側から「あはは、うん。そうそう。麻美ちゃんの恋人ですよ」と優しく笑う西宮さんの声が聞こえてくる。
「あ、そんなことよりさ。今、一階にいるでしょ?」
本人の口から〝恋人〟と発せられ、改めて彼と付き合っていることを実感していた私。そんな私に向けた彼の問いに、私は目を丸くした。
「どうして分かるんですか」
まさか、と思いキョロキョロと辺りを見渡すけれど、私の歩いている廊下に人気はない。
「今さっき、階段で降りていくところ見かけたから。ちょっとそこで待ってて」
「えっ?」
プツッ、と音を鳴らして途切れた通話。
私は、通話の切れてしまった携帯をカバンの中にしまうと、言われた通りその場で立ち止まった。