福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「この状況、おかしくないですか? 一体、何がどうなってるのか未だに理解できないんですけど」
副社長に手を引かれ、連れてこられたのは先程婚活パーティーをしていたホテルから徒歩五分程度の場所にあるごく普通の居酒屋。
目の前にいる彼が次々と注文したものの中から枝豆を手に取り、口に放り込む。そんな私を見て副社長はあははと声を出して笑うとビールをぐっと喉の奥に流し込んだ。
「私は、これで人生最後の婚活だって決めててたんです。だから、あんなお高いホテルで開催される婚活パーティーにエントリーして、力の限り頑張ろうって思ってたっていうのに……」
「最後って、今日の婚活パーティーは何回目なの?」
「もう、9回目になります」
そう発した後、私ははっとした。お酒が入っているとはいえ、つい余計なことまで口走ってしまった。しかし、そんな後悔も時既に遅し。
9回も婚活パーティーに参加して結婚相手が見つからないのか、とバカにされる覚悟をして、恐る恐る副社長の方を見た。
「ふーん。柏原さん、婚活なんかしなくてもモテそうなのにね」
彼は、意外にも私のことをバカにはしなかった。かといって変に同情することもせず、何も変わらない表情でまたごくごくとビールを飲み進める。
「残念ながら、モテないです。そこらへんの女の子みたいに可愛げがないから、彼氏ができても長続きしないんです。そもそも出会いも無いですし、婚活パーティーへの参加を重ねるしか結婚する道はないんです」