福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「けど?」
再び西宮さんが私の顔を覗き込んだ。一瞬、ばちりと合ってしまった視線を逸らした私は、唇を尖らせるとゆっくり口を開いた。
「〝あんなおばさんと付き合ってるの?〟〝どんな手使ったんだろうね〟って、若い女の子達に噂されました」
ぼそぼそ、と小さく呟く。
ゆっくり視線を西宮さんの方に戻すと、彼は口元を押さえて肩を小刻みに揺らしていた。
どうやら笑いを堪えているらしい彼の笑いはなかなか治らないようで、私はじっと彼を睨みつけるようにして見た。
「何笑ってるんですか」
「いや、ごめんごめん。意外とそういう事、気にしちゃうんだと思ってさ」
西宮さんみたいな人気者と付き合ったのが、こんな平凡……いや、最早、婚期を逃した残り物でしかない私だ。
噂になることは多少なり覚悟していたけれど、あれだけの視線を一日に浴びて、その挙句あんな事を若い子に言われたら、覚悟をしていたとはいえ少しのダメージくらいは受ける。
「……痛い視線を浴びて、そんな噂までされたら流石にちょっとくらいは気にします」
それをこの人は、他人事みたいに笑ってどういうつもりなんだ。
少しだけ腹を立てて、そっぽを向くと、西宮さんは慌ててまた私の顔を覗き込んだ。
「あー、ごめんごめん。麻美、怒らないで。そういうつもりじゃなくて、なんていうか……俺は、こうして広まって良かったと思ってるんだよね」