福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「え?」
「いつも他の社員さんとかと爽やかに話してるし、優しい人なのに、時々黒い一面が出て来るというか、厳しいというか。何というか」
嫌いじゃないですけど、とフォローのつもりで付け足すと、彼は目をくるりと丸くしたあと笑い出した。
「はは、フォローしてくれるんだ。ありがとう。まあ、どっちも俺だけど、今のも本音で、本当の俺だよ」
がっかりさせちゃった? と問う彼に、私は首を横に振った。
「いつも感じ良く笑って、いつも相手のことばかり考えて優しい言葉をかけてる人よりも、そっちの方が人間らしいと思います。良い人って、きっと疲れると思うので、そういう一面を見せてもらえるのは嬉しいです」
「……あー、無理。離れたくなくなったから、ハグ延長で」
ぎゅっ、と西宮さんの手の力が強くなる。
誰かに見られたらまずいと思っていながら「あと、10秒だけですからね」なんて答えてしまう私は本当に甘い。
私も、彼の背中に回した手の力を少しだけ強めると、彼の匂いを感じながらゆっくり瞼を閉じた。