福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
淡々と仕事を進め、時計の短針が12を指すと、私と優佳は立ち上がり駅前のカフェへと向かった。
「噂、相変わらずね」
案内された窓際の席に腰をかけて注文を済ませると、向かい側に腰をかけている優佳が口を開いた。
「あー……うん。覚悟してたつもりではいたけど、まさかここまで噂が広まるとは思わなかった」
「隣にいると分かるけど、物凄い視線浴びてるもんね。特に女子から」
女子って怖いよね、と言って冗談っぽく笑う彼女に、私も遠慮がちに笑い返す。
「でも、意外と大丈夫そうね。流石にダメージ食らってるだろうし励まそうかなと思ったんだけど、その必要もなさそう」
「あはは、うん。何とか大丈夫。ありがとう」
正直、昨日はダメージも食らったし、この視線を何日も浴び続けるのかと思うと気が滅入りそうだったけれど、今日、意外とこうして変わらない1日を過ごせているのは、きっと西宮さんのおかげだ。
「それじゃあ、副社長とも上手くいってるんだ。安心した」
ほっとしたように発した優佳の言葉。私はその言葉を否定はせず、少し口角を上げながら手元にあったお冷を口に運んだ。