福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「あれ? そうだったっけ?」
きょとんとした表情を浮かべて、オムライスを口へ放る優佳に「そうそう」と返し、お冷に手を伸ばす。
今さっき、優佳の口から名前を聞くまで忘れていた小椋唯という名前。
忘れたくても忘れられなかったはずの名前を、いつの間にか忘れていたことに今更気づいた私は、ふと彼のことを思い出した。
大学時代を共に過ごし、そこから恋人になった彼との思い出は、やっぱり、今思い返しても綺麗なまま。綺麗だからこそ、もし、再会してしまった時、私の心が揺らいでしまわないかが不安になった。
もちろん、西宮さんのことを好きな気持ちに嘘はない。だけど、正直なところ、彼と再会して気持ちが揺らがないと言い切れるほどの自信はない。
「でも、またうち来たりしたら、再会しちゃうかもしれないよね。再会して、より戻そう、なんて言われちゃうかもよ?」
「だから、それは絶対に無いってば」
ぶんぶん、と手を左右に振り、ロコモコを次々と頬張る。
よりを戻すなんてことはあり得ない。だけど、うちの会社で会う可能性は少なからずある。
もし、そうなったら私は、一体どんな顔をして唯の前に立つのだろう。
そして、一体、どんな感情を胸に抱くのだろうか────。