福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
もし、唯に会ってしまったら。と、想像して不安になってしまったあの日から、気づけば一週間が経っていた。
最初の数日は社内を警戒して歩いていた私も、彼に似た人なんて全く見かけることもなく過ぎて行く日々に完全に安心しきっていた。そんなある日。
「ちょっと、麻美!」
「え、何?」
「あ、あそこ……出入り口に」
今日のランチは駅前のカフェに行こうと約束していた私と優佳。12時を過ぎてオフィスを出た私達がロビーを歩いていると、突然、優佳が大きな声を出した。
とんとん、と私の肩を叩いている彼女の視線の先を追う。すると、そこには西宮さんと、その隣を歩く唯がいた。
「唯」
つい、声になって溢れた名前。
久しぶりに見たその姿は、私の数メートル先にある。
このまま、視線を外して通り過ぎれば良い。そう思った瞬間にばちりと合ってしまった私と唯の視線。彼は、私を見て目を大きく開くと、そのまま私の方へと向かって来た。
「久しぶり」
西宮さんと並んだまま、私達の目の前で立ち止まった唯。彼を目の前にし、彼の優しい声を久しぶりに聞いた私は、意外にも冷静だった。
「お久しぶりです」
ポーカーフェイスを装い、返事を返す。すると、西宮さんが「小椋さん、柏原と知り合いなんですね」と言って目を丸くした。