福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
私は、彼に返事をする代わりに黙って頷いた。
いつも優しかった彼が言った最後の本音。それを、忘れるわけない。忘れられるわけがない。今でも、鮮明に覚えてる。
「あの言葉に嘘はなかった。確かに、あの時の俺の本音だった。だけど、あの時に麻美の気持ちをしっかり分かってやれなかったこと、すごく後悔してる。きっと、今なら分かってあげられるんだろうなって思ってる」
「……うん」
「まだ子供だったせいで、最後まで好きだったのに、最後の最後に麻美を傷つけた事……本当に、ごめん」
私の方を見て、頭を下げる彼。彼の言葉に、私は慌てて首を横に振った。
「唯は悪くない。だから、謝らないで」
「ううん。でも、それでも間違いなく麻美の事を傷つけたから。ずっと言いたかった」
ごめんな、と小さく呟く彼に、私はもう一度首を横に振った。
まさか、彼がこんな風にして私のことを考えてくれていたなんて思わなかった。だんだんと目頭が熱くなってきた私は、無理やり口角を上げて口を開く。
「私なら大丈夫だよ。そりゃあ、最初は落ち込んだし、辛かった。でも、それはお互い様。そもそも、私の言葉足らずなこの性格に問題がある。自分でも分かってたのに、それでも気持ちを上手く伝える事が出来なくて、私も唯を苦しめた。私こそ、ごめんなさい」