福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
私の一言に、唯は「うん。俺もそう思う」と昔を懐かしむような優しい表情で頷き、その後私たちは昔話や今のお互いの話で盛り上がり家路に着いた。
ふと、立ち止まって携帯を見る。時刻は〝20:26〟と表示されていて、私が唯と一緒にいた時間は意外にも2時間程度だった事を知った。
私は、足を進め始めると、何となく家とは違う方向に向かう。
今の時間ならまだ西宮さんがいるかもしれない。なんて、そんなことを考えながら私が向かっているのは、もちろん会社。
会社の前までやってくると、私は再び携帯を開き、通話履歴から西宮さんの電話番号を表示し、電話をかけようかかけまいかを悩み始めた。
今、会社にいるかどうかも分からないし、連絡をしても邪魔になるかもしれない。だけど、会社いるとしても連絡しなければすれ違ってしまうかもしれない。
そんなことを永遠と考え続けること約15分。うろうろと会社の前を歩きながら携帯とにらめっこをしている私を、周りの人はきっと不審な目で見ているに違いない。
そろそろかけるかかけないかを決めないと。と、思ったその時。
「わっ!」
突然、携帯の画面が着信画面に切り替わり、テンポの良い着信音が鳴り響いた。