福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「で、どうしてこんなところにいるのかな?」
首を傾げ、私をじっと見つめてくる彼の視線から逃げようと必死に試みる。だけど、逸らしたって強く感じる視線に私は耐えきれそうになかった。
ただただ、視線を極限まで落として何と答えようかを迷っていると「それじゃあ、ちょっと質問を変更します」と、意外にも西宮さんの方が先に言葉を発した。
何の質問をされるのだろう、と顔を上げると、西宮さんはいつもと変わらない表情のまま私に左手を差し出している。
「一緒に帰りませんか?」
そう言った西宮さんは、くっと口角を上げて王子様のような笑顔を見せた。
きっと、向けられた人みんなの気分が良くなるような。だけど、作り上げられたようなものじゃなくて、本当に自然に出来ている彼のこの表情。
優しいだけじゃない。芯があって、思いやりがある。人付き合いが上手い彼の人柄がよく出ているこの笑顔が、私は好きだ。この笑顔を見れば見るほど、私は彼に惹きつけられて、彼を拒めなくなった。
「……はい」
定時を過ぎているとはいえ、会社の真ん前。ちらちらと人通りもあるというのに、私は西宮さんの手を拒めるわけもなく、彼の手のひらに自分の手のひらを重ねた。