福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
私が重ねた手のひらをぎゅっと握った彼は、ゆっくり、私の歩幅に合わせて歩き始めた。
彼とこうして手を繋ぎながら歩くのは、これで二度目。彼と付き合うことになったあの日以来だ。
彼の綺麗で細長い指。繋いだ手は優しく包まれていて、温かい。
出会って間もないし、付き合い始めてまだ一ヶ月すら経っていない。だけど、私は自分が思っている以上に彼のことが好きなんだと思う。
「……あの」
「ん? なに?」
私の右隣を歩いている西宮さんが私の方を向いた。
変わらず優しい表情をしている西宮さんから少し視線を外すと、私はすうっと空気を吸い込んだ。
「今日、お昼に会った小椋さん……昔、付き合ってた人なんです」
ゆっくり、小さく。でも、ちゃんと西宮さんまで届くようにそう発する。意外にも彼はさほど驚かずに「そうなんだ」という返答を返してきた。
「あんまり驚かないんですね」
「あはは。いや、お昼会った時さ、麻美の様子が少しいつもと違うように見えたから、小椋さんと過去に何かあったのかな、くらいには思ってたかな」
でも、元彼かあ。と、少しだけ複雑に笑った西宮さんはどんなことを考えているんだろう。